素の自分で指導に臨むことで、自分の指導を好きになれました。この変化は約20年ほど前のこと。
あるコーチの言葉が、僕が歩むべき指導人生の道を軌道修正してくれました。
それまで指導の結果(試合成績)はそこそこでしたが、自分の指導にずっとモヤモヤしていた時代。なんというか、自分の思いと言葉がチグハグで、簡単に言うと「カッコつけ」のような、気取った指導だったんです。
こんな思いを持っているコーチがいるかは分かりませんが、もしもあなたがそうだとしたら、今回の記事をぜひ参考にしてみてください。
自分の言葉でコーチングしてみて

「自分をもっと出して、自分の言葉でコーチングしてみて」
まだ若く勇猛果敢に攻めていく、カッコつけコーチの心の深部へ突き刺さった一言でした。
その頃の僕は魅力がなかったのだと思います。自分でもわかるくらい教科書通りの、なんちゃって標準語で指導していた時期でした。なんだか指導に心がなく、どちらかというと冷たい感じだったと思います。
この突き刺さった言葉を聞いてからは、なんちゃってを捨て去り、素の自分と素の言葉(関西弁)での指導が始まりました。
するとどうでしょう、結果も成績もそれまでと比べ物にならないくらいの成果があり、そして何よりコーチとして高い評価を得られるようになりました。
3人のコーチ
3拍子そろった3人のコーチのことを覚えています。
シンプル・説得力・強弱
この3人のコーチは、グランド内外の姿に違いがありません。つまりいつも「素」の自分で指導をしていました。そして、彼らの言葉はすごく分かりやすい。
この3人のコーチは選手を育てながら、つねに安定した結果を得ていました。研ぎ澄まされた洞察力をもち、時にはとても厳しい言葉で刺激を与えます。かといって、選手が離れていくわけでも、選手との間に溝ができるわけでもなく、選手からの信頼はとても厚いです。
素の自分を見せるコーチが語る言葉は選手に伝わり、その言葉のほとんどが聞き逃せない、忘れられない言葉だと選手たちは言います。
邪魔しているのはその「立場」かも

立場のイメージってありますよね。こうでなきゃみたいなもの。
リーダー、キャプテン、監督、部長とか。
例えば、コーチから監督になって苦しむ人がたくさんいました。あと、責任あるポジションに置かれた人もそうです。そして、その人たちに共通していたことが、言葉とふるまいが変わったということ。
すごく横柄な姿になったとかじゃなく、言葉やふるまいかたがちょっと変化しただけでしたが、しばらくすると選手との距離ができてしまいましたね。そして厄介なことに、この変化によってもたらされた選手との距離は、なかなか埋めることが出来なかったようで、いつも問題を抱えていました。
選手たちはいつも、コーチのちょっとした変化を敏感に感じとっているのでしょう。立場が変わり、自分の言葉やふるまいを変えてしまうことは、もしかしたらリスクがあるのかもしれません。
自分を「素」で正直に表現してみる

じっさいに僕自身が「素」の効果を体験しました。そして、3人のコーチの素の姿による指導の成果も結果が証明してくれています。コーチとして自分が発する言葉には責任があります。言ってはいけない言葉も、ふるまいもあるはずです。でも、だからといって教科書通りの言葉を、違う自分に語らせていては本当の指導に在り付けない気がします。
自分の指導にモヤモヤしている人、思いと言葉のチグハグ感に悩んでいる人。一度、素の自分で指導してみてください。すぐに結果を得られないかもですが、選手たちの表情はすぐに変化が現れるはずです。