「アイツは俺が育てた」
この言葉、何度も聞かされたことがある。今でもいろんなところで耳にすることがある。
プロになった選手や、有名校へ入学した選手を指導した実績は、指導者にとって誇りだし、自慢したくなるだろう。
でも僕が尊敬する指導者たちは、ちょっとちがう。
名立たる名選手を指導した実績があるのに、彼らは自分から話すことは一度もなかった。
なぜなのか?
忘れられない、彼らの言葉。
「育てた名選手の何倍もの数の選手を、篩(ふるい)にかけてきたから。それと、才能があっても、高いステージへ引き上げてやれなかった選手がたくさんいるから」
だから彼らは、自慢げに「俺が育てた」なんて言うことはしない。
いい指導者の条件が何なのか、僕にはよく分からない。
でも、尊敬できる指導者はみんな謙虚で、一言一句に責任をもって指導していた。
しかも、いつも全体を見渡し、すべての選手を指導していた。
人が育つ理由がここにある。
カッコいいと思う、こういう指導者。