子ども指導のボトルネック「10歳の壁は指導者が作っている」

昨日と今日の姿が違いすぎる10歳の子ども。計画通りに事が進まず、みんなの前で叱ったり、声を荒げてしまった経験があります。

「10歳の壁」とも形容される、子どもが大きく変化するこの時期。少し鼻にかけた物言いや、生意気な口調。とつぜん言葉や態度が変わる、10歳への指導はむずかしいこばかりです。

この年代は200人ほど指導したでしょうか。決して多い数ではないですが、現場で得たこの年代の指導の考え方を紹介します。

10歳の子どもとの接し方を少し変化させるだけで、関係がよくなります。そして、日々の指導にも大きな変化をもたらしてくれるはずです。

子ども扱いしない

10歳の子どもへの指導は「子ども扱いしない」と僕は決めています。そうすることで、自分を律し行動できる「個」の育成につながるからです。

10歳の子どもは変化します。この時期は「変化する準備を進める時期」と言ってもいいかもです。そして次の3つをいつも意識して、指導しています。

責めない・褒める・与える

  1. 個人を責めない
  2. まず褒める
  3. 役割を与える

1. 個人を責めない

失敗や、やり過ぎたことについて、とくに集団の前で個人を責めないことです。みんなの前で言われた子は、晒されたことを恨んだり、大人に対して恐怖心を持つようになるからです。なので、伝える必要があるときは、基本的に1対1の状態で丁寧に説明します。大人との良好な関係を構築する、最も重要な対応の一つと考えています。

2. まず褒める

正しく評価した上で、褒めます。できたことだけではなく、やろうとしたことも見逃さず、必ず褒めます。たとえ失敗に終わっても、やろうとしたことを見抜き、そこを褒めると失敗を怖がらなくなります。また、ちょっと盛るぐらいで、褒めるのもありです。感情を込めて褒めたときの子どもの表情はぜんぜん違います。

3. 役割を与える

個人に役割を与え、小さな責任を負わせます。子どもは、個人的にお願いされることが好きで、一生懸命やり遂げようと頑張ってくれます。この役割の提供は、責任に対して前向きな「人の育成」に貢献できると考えています。

これら3つの項目、伝え方や褒め方、そして役割を与える時は、大人と話すようにしています。

消える「自己主張」と、与えてしまう「優劣」

成長とともに、なぜ子どもたちの自己主張が消え、優劣がついてしまうのでしょうか?

とりわけ集団を扱う時、僕たちは一定の基準(行動規範)を与えます。これは重要なことでもあり、欠かすことができないでしょう。

そんな中、僕たち指導者は、子どもが抱く主義・主張を奪いとる、あるいはそれを隠させてしまうような指導をしてないでしょうか?

10歳から薄れていく自己主張

日本人は自己主張がとても弱いと言われます。自分を表現することが苦手なのでしょうか、一歩引いてしまうことが多いです。

でもどうなんでしょう、7歳、8歳の子どもの多くは、自己主張を楽しんでいるようにも見えます。だれかが話し終えるのを待つことなく、自分の言葉を伝えようとガツガツ主張してきます。

でもこの自己主張は、10歳になる頃から弱まってくるように感じます。これは個人的な意見ですが、この原因の多くはこの10歳前後の指導に何らかの影響を受け、子どもの自己主張が弱くなると考えています。

態度を正して平均化し、見える変化で優劣をつける

10歳の態度と変化で特徴的なものです。

態度
変化
  • 生意気なことを言う
  • 不満顔を見せる
  • 食い下がってくる
  • 成長スピードに違い
  • 自分と他人を比べる
  • ネガティブ思考が出はじめる

態度

指導者はその行為自体を「させなくする」ことが多いです。その場できつく叱ることもあれば、必要以上に反省させることもあります。

子どもにはそれが、正しいか正しくないかの判断力はまだ備わっていません。でも、指導者はこれらをさせなくし「基準」を植え付けます。

この指導を繰り返し行い、全体を平均化することで、目に付くような態度は隠れていきますが、同時に負のマインドが隠れて育つ原因を作ると考えています。

この、隠れて育つ「負のマインド」が一度身についてしまうと、僕の経験上、修正するのが非常に困難です。

変化

身体面も内面も大きく変化しはじめます。そして、これらを客観的に評価し、指導者は10歳の時期から「優劣」をつけはじめる傾向があります。

つまり、できる子、できない子です。

じっさい僕も10歳の子の見た目だけに基づいて、将来を決定づける評価をしてきました。早期に子どもの能力を見た目で評価し、篩に掛けるのはあってはならないことです。

認めて育てる

夕日を見る少年

「違いを認め、強みを育てる」これが育成年代の指導者の役割だと信じています。

幼児から大人まで、幅広い層の指導を経験しましたが、この大きく変化するこの10歳前後の指導はその後の人生にも大きな影響を与えるものです。

人にはそれぞれ特徴があり、得意なこともみんな同じではないはず。なにかの基準にならうため、好きなことをさせず、言いたいことを言わせないのは、人としての成長には繋がりません。

まずは、その子の特徴、他との違いを指導者が認めてあげること。そうすることで、特徴や違いを自分で強みに変えていく「自分力」が育っていきます。

小さな大人と対等にフェアに会話する

生意気な話し方をしたり、横柄で反抗的な態度を見せる10歳の子ども。僕はこの年代の子どもを「小さな大人」と捉え指導します。対等な立場で話したり、お願いしたりすることで、子どもとの良い関係が生まれます。もちろん逸脱した行為(人を傷つけたりする行為など)があれば厳しく指導しますが、良い関係の中では、めったに起こることはありません。

この10歳の指導は、何年後かに訪れる「ひとり立ち」に重要な影響を与えると考えています。この機会に、自分の指導の内側を少しのぞいてみてください。指導者の振る舞い方を変えるだけで、子どもの変化がすぐに現れてきます。

iMA

iMA

コーチ|1972.4.1|幼児からプロ選手約4,000人指導|2019年Asian LABO設立|2022年iMA設立|アイデアをカタチに変える

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