教本で学んだ理論、映像で見た手法を使いこなすのって、けっこう難しいんです。指導者として、いろんな学びを得ても、実際の指導現場に出ると、使い方が分からなかったりします。
今回は、指導レベルアップの方法の一つ「見てマネをする」について解説します。
僕は20年間これを続けています。今でも共感を得た指導を発見したら即マネしてみます。事実アマチュアからプロの指導者まで、指導のレベルアップの秘訣で最も多い答えは「他のコーチの指導を見る」でした。
自分以外の指導を見ることは、いろんな気づきをもたらします。その気づきが、自分の指導力のアップに必ず役立ちます。でも、どこで、どのように、なにを見ればいいのか、分からないことも多いはずです。
この記事では20年間の振り返りから、誰かの指導を見る重要性や、注意点などを紹介します。
先ず理論と手法に動きを加えてみよう
理論や手法を使いこなせるようにするためには、他のコーチの指導をたくさん見てください。とくに指導者になりたての人へお勧めします。
指導経験が少ない人は、学んだ理論の「流し読み指導」になりがちです。まずは、他のコーチの指導を見させてもらいましょう。そこで指導の流れや場の雰囲気を自分で感じてみてください。そして、気に入った話し方や、間のとり方などを、たくさん真似してみましょう。
Pointここでいう「理論を動かす方法」とは、あなたが学んできた、理論や手法を指導現場で使えるようにする方法のことです。

何を、どれくらい見ればいいのか?
自分が関係する分野の指導でもいいし、他のスポーツやカテゴリーの指導を見てもいいと思います。むしろそうした方がいいかもしれません。
見るチャンスがあれば、レベルや場所を問わずたくさんの指導を見ることがオススメです。
でも、同じ人の指導だけを追っかけることはオススメしません。実際、そうする人も多いですが、考え方に偏りがでて、柔軟性にかける指導になる傾向があります。
見ないという選択肢
もちろん、誰の指導も見ないという選択肢もあるでしょう。
とくべつに学ばなくても、他のコーチの指導を見なくても、指導できてしまう人もいれば、素晴らしい指導センスの持ち主もいます。また、選手時代に得た経験を上手くアレンジし、独自の指導法を確立していくコーチもいます。
なので、誰の指導も見ないという選択肢は否定しません。
「カタチ」と「動き」を見る

誰かの指導を見ると言っても、一体なにを見ればいいのでしょうか?
まず最初に場の「カタチ」をチェックして、次にコーチの「動き」を見ていくといいと思います。
Pointカタチとは場の設定や時間配分など物理的な部分を意味し、動きとは動的な部分のことです。
コーチが準備した指導の場「カタチ」の中で、コーチがどのような振る舞い「動き」で指導していくのかを見てみてください。
誰の指導を見る?
評判がいい指導でもいいし、ちょっと時間がある時に、近くの指導をのぞきにいくのもいいでしょう。そして、そこでも同じように、見るものは「カタチ」と「動き」です。
Tips見ることに慣れてない指導者は、先ずは動きだけを徹底して見るて、それを真似することをオススメします。
すべてに共感できる指導に出会えることは稀だと思います。でも、素晴らしい指導に出会える機会は必ずあります。
学ぶ姿勢を忘れず、自分で動けばいい指導にたくさん出会えます。そして指導を見るときに大切なことは、偏見を持たず、絶対に批判的に見ないことです。なぜなら、どんな指導者にも良いところがあり、それを見つけることができれば、自分の指導の実力を引き上げてくれるからです。
実際の指導現場で見よう
指導現場へ行けば、始まりから終わりまでの指導が見れます。そして時間や広さなども確認でき、その場の雰囲気を感じることができます。
また、指導者の言葉に対し、選手がどのような反応をするかなど、指導を受けている人たちの様子まで観察することができます。
ただ、もう一度見たい場面を見れないということが頻発したり、その指導現場まで行く必要があるといったようなデメリットがあります。
映像で見る
今ではYouTubeやインスタグラムなどで、指導に関する映像がネット上にたくさん配信されています。そして、それらの映像は何度も見返すことができ、自分の頭に刷り込むことが可能です。
ほとんどの映像は、見やすく編集されているので、時間がない人たちにもすごく便利です。
ただ少し課題があるとすれば、ほとんどが整えられた映像だということ。見やすく綺麗に編集されていて、じっさいの雰囲気を感じにくいこともあります。
たとえば指導現場では、いろんな予期しないことが起こります。コーチとして、突発的な出来事などへの瞬時の対応はとても重要ですが、多くの映像ではそういった部分が欠落していて、見えていない部分が多いのかもしれません。
真似をする2つの方法
見た指導の真似をするには、基本的に2つの方法があると考えています。
- 取捨選択し自分の指導に取り入れる
- 完全コピーをする
取捨選択をする
共感を得られた指導すべてが自分に合うとは限りません。だから、自分で選択することが重要です。選び方のコツは、興味を感じたカタチや動きを真似してやってみること。見た指導の部分的コピーもいいですし、自分なりにアレンジを加えてもいいと思います。
こうしてやってみることで、自分の指導がさらに躍動的になることもあれば、共感は得たけど、自分では扱えない、あるいは自分らしくない指導だということが分かったりします。
カタチも動きも自分にあったものがあります。むしろ、自分にあったものでなければ、指導を楽しむことはできないでしょう。これは実際にやってみないとわからないことが多いですね。
完全コピー
いわゆる完コピ。最初から最後まで、完全に同じことをやってみる方法です。
僕も完コピは何度かやったことがあります。ぶっちゃけ僕は苦手です。
理由は、発する言葉が自分のものではないし、起こった問題や変化への対応も、誰かに遠隔操作されている感じがしたからです。
だからといって完コピがダメということではありません。指導経験がない人には、一つの有効な手段だと思いますし、ある程度経験を積んだ指導者にも、指導の行き詰まりや、マンネリ感を感じたときに完コピは有効なはずです。

いつでも成長できる
いろんな人の指導を見て、指導のカタチや動きをたくさん集めてみてください。その中から自分に合う指導を選び、真似をしてみてください。自分の指導を成長させるためには、年齢や経験はあまり重要ではないはず。指導者として成長できる機会は、いつでもどこにでもあります。
初心者は指導の土台作りのために、
熟練者はアップデートのために、
さらに上を目指す人はオンリーワンのために。
たくさん見て学ぶことは、きっとあなたの指導レベルを高めてくれます。