どうする部活動地域移行【懸念と課題】

今回の記事は、部活動を完全に学校から切り離し、地域のクラブまたは団体等へ移行する場合に懸念されることや課題について書いています。外から見た個人の意見として述べます。

現在、中学生を対象にトレーニングアカデミーという活動を行っています。週に一度のサッカーの練習環境は今年で2年目になりました。この活動経験から得た、中学生や保護者の声を参考に、部活動地域移行についての記事を書きます。

「改革推進期間」

2023年から2025年の3年間は「改革推進期間」とあります。タイトルはどうであれ、変わる時代のど真ん中付近に、部活動が置かれていると認識しています。

地域移行「3つの懸念」

  1. 移行先:クラブ、期間限定コーチ
  2. 負担 :会費、送迎
  3. 指導 :至上主義、クオリティ

移行先

まず、部活動地域移行を受け入れてくれるクラブが、各市町に存在するかというと、そう簡単には見つからないはずです。地域によっては何十キロも離れたクラブへ依頼する必要もあるでしょう。

各クラブは活動の継続と指導の質を維持するため、人材を確保することに手一杯です。だから各クラブともにコーチの数に余裕はありません。仮に受け入れてくれたとしても、クラブ内で活躍するコーチを派遣することは、クラブにとってリスクを抱えることになるので、そのようなコーチを期待することは難しいはずです。

そうなると大学生の起用も考えられますが、学生の場合は学生生活を終えるまでの期間限定となる可能性が高いです。卒業後も十分な収入を得る環境であれば話は別ですが、そこまで整った未来環境を約束することは困難です。あと保護者コーチも選択肢として考えられますが、子どもが在籍する期間限定となるので、こちらも選択肢から外した方がよさそうです。

移行先のクラブや団体を見つけるだけでは十分ではないと思います。現場で指導を担当するコーチまで評価できてこそ、移行先として検討できるかを考えた方がよさそうです。

余談ですが「受け皿」という言葉はネガティブに感じます。外へ放り投げられたものを、下で拾うようなイメージだからです。もしかすると同じようなイメージを持っているクラブやコーチは多いかもしれませんね。

負担

部活動は基本的にお金はかからず、送迎なども週末に何度かあるぐらい。だけど地域移行となると、いくつかのことについて各家庭へ負担をお願いすることになります。

  • 会費
  • 送迎

こうなると各家庭の事情が出てくるので、通いたくても通えない生徒が出ます。費用を払う余裕がなかったり、活動場所まで行けない生徒もいるでしょう。

また地域移行には自治体が活動経費を補助することも考えられます。しかしあくまで個人的意見ですが、部活動にお金を使うより、そのお金は学校内教育の方に使うべきだと思います。

なぜなら、部活動を地域へ移行する理由の一つに、学校内教育の質の向上とあるからです。

指導

移行先でも書きましたが、クラブ内で活躍しているコーチが派遣される確率は低いと考えています。なので経験未熟なコーチや、クラブ内での指導に問題を抱えるコーチが派遣される可能性を理解しておく必要がありそうです。

また、結果に固執する「至上主義」リスクもあります。これは地域移行されたから起こる現象だとは言えませんが、学校から離れることで担当コーチのエゴがより出しやすくなる状況になりそうです。こうなると出場機会の問題や、能力主義による指導の不公平さが生じ、生徒や保護者とのトラブルが頻発する可能性も十分に考えられます。

大きな課題

部活動にはいろんな思いを持った生徒が集まります。友だちと一緒の時間を楽しみたい生徒や、より高みを目指す競技志向を持つ生徒もいます。

部活動をそっくりそのまま外へ移すのか?それとも新しい場所を作るのか?これを原点として地域移行を考えると、これから準備すべきことが見えてきそうな気がします。

スポーツの特別化

少し視野を広げて考えてほしいことがあります。

僕は今の育成年代のスポーツが、特別なものになってしまったことを危惧しています。どういう意味かというと、運動能力が高い子、あるいは高い競技志向を持つ子がするのがスポーツだという世間の認識のことです。

だから純粋にやってみたいだけの子や、スポーツに触れてみたい子が第一歩を踏み出すことが、困難な状況が増えてるような気がします。

そんな環境の中で、スポーツをする機会を得た子どもは、特別な場所で専門的な指導を受け、やがて階層化されていきます。知らずのうちに、スポーツに対する自由は強制に変わり、スポーツへの興味や情熱が溶けはじめます。そして早い段階でスポーツから離れていく子どもが増えていきます。

スポーツの特別化が招く育成年代のブレーキシステム。そんなふうに考えますが、皆さんはどう考えますか?

部活動の良さ

僕自身、中学高校と部活動出身です。ちょっと古くさいかもしれませんが、部活動で人間関係や規律などを学びました。そしてその学びが今に活きています。当時は不条理なこともあっただろうし、追い込まれる状況になん度も立たされました。

だけどそんな経験がこの記事を書く動機になっています。なぜなら部活動での時間が今に活かされ、その良さを少しでも伝えたいと思えるからです。

地域移行に賛成?

SNSで目にした数字です。地域移行に賛成する教員と生徒の割合です。

教員
生徒
  • 80%
  • 20%

データの出所は分かりません。なのでこの数字の精度や信頼度も不明です。だけど僕が聞いた教育関係の人や生徒からの声は、ほとんど同じだと言えます。そして生徒側のこの数字は保護者にも当てはまるかもしれません。もしかしたらその割合は20%を下回る可能性もあるでしょう。

20%の生徒だけが賛成だからといって、80%の生徒は部活動の存続を望んでいるかというと、そうではないでしょう。80%の生徒は新しい時代の新しい部活動のあり方を求めていると思います。

現代の子どもたちは新しい情報にとても敏感です。そして彼らの考え方は、すでに私たちの遥か先を行ってるかもしれません。これからは育成年代が持つ特異性を活かすことで、新たな道筋が見えてくるかもしれません。

次回は部活の存続について書きます。

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iMA

iMA

サッカーコーチ|1972.4.1|2022年10月iMA設立|2023年春Zero coachスタート

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