指導力アップのコツは、他のコーチの指導を見ることです

教本で学んだ指導理論、映像で見たメソッドを実践しても、なかなかうまくいかないです。現場での指導力を上げるためには、いったいどんなことをすれば効果があるのでしょうか。

今回は、指導者の学びの方法の一つ「見る学び」についてです。アマチュアからプロの指導者まで、指導力アップの秘訣で最も多い答えは「他のコーチの指導を見る」でした。

自分以外の指導を見ることは、自分の指導力のアップに必ず役立ちます。でも、どこで、どのように、なにを見ればいいのか、分からないことも多いはずです。

この記事では20年間の振り返りから、誰かの指導を見る重要性や、注意点などを紹介します。

学んだ理論に動きを加える

誰かの指導を見ることで、学んだ指導理論が動き始めます。

初心者も経験者も、そして熟練者にとっても、誰かの指導を見ることはとても重要なことです。

見るとどうなるのか?

学んだ指導理論や型は、動かすことで初めて指導になります。

誰かの指導を見ることは、学んだ理論や型の動かし方の方法を知ることに役立ちます。

Tips指導初心者は、動かし方が分からないことが多いです。だから、誰かの指導の真似から始めるのは、一つの有効な手段です。

何を、どれくらい見ればいいのか?

自分が関係する分野の指導でもいいし、他のスポーツやカテゴリーの指導を見てもいいでしょう。むしろそうした方がいいかもしれません。

見るチャンスがあれば、レベルや場所を問わずたくさんの指導を見ることをオススメします。

Tips僕は誰かの指導を見た後、指導の意図や考え方を聞かないようにしています。見ることは「自分の指導力アップ」が目的で、そのためには、自分の考え方を作ることが重要だと考えているからです。

@同じ人の指導だけを追いかけて見ることはオススメしません。そうする人も多いですが、考え方に偏りがでて、柔軟性にかける指導になりがちです。

見ないという選択肢

見ないという選択肢も、もちろんあります。

誰かの指導を見なくても、学ばなくても指導できてしまう人もいれば、もともと指導センスを持つ人がいるのも確かです。選手経験を活かして、独自の指導法を確立していくのもいいでしょう。

なので、誰の指導も見ないという選択肢は否定できません。

なにを見るのか。「カタチ」と「動き」

誰かの指導を見ると言っても、なにを見ればいいのでしょうか?

先ずは場の「カタチ」をチェックして、徐々に指導者の「動き」を見ていくといいでしょう。

理由は、準備した指導の場「カタチ」の中で、どのような振る舞い「動き」で指導を動かしていくのかを知りたいから。

Pointここでいうカタチとは、場の設定や時間配分など物理的な部分を意味し、動きとは動的な部分のことです。

カタチ
動き
  • 場の設定
  • 時間配分
  • グルーピング
  • 用具の使い方など
  • 立ち姿・位置
  • 声かけのタイミング
  • 間(ま)
  • 表情など

誰の指導を見る?

評判がいい指導でもいいし、ちょっと時間がある時に、近くの指導をのぞきにいくのもいいでしょう。

そして、そこでも同じように、見るものは「カタチ」と「動き」です。

すべてに共感できる指導に出会えることは稀です。でも、ちょっとした素晴らしい指導に出会える機会はたくさんあります。

学ぶ姿勢を忘れず、自分で動けばいい指導にたくさん出会えます。偏見を持たず、絶対に批判的に見ないこと。指導者は、かならず良いところがあり、それを見つける気構えをもって見させてもらうべきです。

Tips見ることに慣れてない指導者は、先ずは動きだけを徹底して見ることをオススメします。

じっさいの指導現場で見る

指導現場へ行けば、始まりから終わりまでの動かし方が見れます。そして時間や広さなども確認でき、その場も雰囲気を感じることができます。

また、指導者の言葉に対し、選手がどのような反応をするかなど、細部まで観察できます。

ただ、もう一度見たい場面を見れないということが頻発したり、その指導現場まで行く必要があるといったようなデメリットがあります。

メリット
デメリット
  • 雰囲気を感じられる
  • 細部を観察できる
  • 全体の流れを把握できる
  • 繰り返し見れない
  • その場に行く必要がある
  • メモが追いつかない

映像で見る

今ではYouTubeやインスタグラムなどで、指導に関する映像がネット上にたくさん配信されています。そして、それらの映像は何度も見返すことができ、自分の頭に刷り込むことが可能です。

動きもカタチも整っていて、目を引くものばかり。

ただ少し問題だと感じるのは、ほとんどが整えられたものだということ。見やすく綺麗に編集されていて、じっさいの雰囲気を感じにくいです。

指導現場ではいろんなことが起こります。その中でも、失敗や予期しない変化などへの対応はとても重要ですが、多くの映像ではその部分が欠落していて、見えていない部分が多いです。

見たものを、どうやって再現するのか

自分で再現するには、基本的に2つの方法があると考えています。

  • 取捨選択し自分の指導に取り入れる
  • 完全コピーをする

取捨選択をする

見て共感を得た指導すべてが自分に合うとは限りません。だから、自分で選択することが重要です。選び方のコツは、興味を感じた動きやカタチをやってみること。見た指導の部分的コピーもいいですし、自分なりにアレンジを加えてもいいと思います。

こうしてやってみることで、自分の指導にさらに躍動感を与たり、逆に自分では扱えない、あるいは自分らしくない指導だということが分かったりします。

動きもカタチも、自分にあったものがあります。むしろ、自分にあったものでなければ、指導は楽しめません。これは実際にやってみないとわからないことが多いはずです。

完全コピー

いわゆる完コピ。最初から最後まで、完全に同じことをやってみる方法です。

何度かやってみたことがあります。でも僕の場合ですが、うまくいかなかった以上に、楽しさを感じなかったです。理由は、発する言葉が自分のものではなく、起こった問題や変化への対応も、誰かに遠隔操作されながら対応している感じがしたから。

指導経験がない人には、一つの有効な手段だと思いますが、ある程度経験を積んだ指導者には、向いていないやり方かもしれません。

いつでも成長できる

誰かの指導を見て、指導の動かし方をたくさん集めてみてください。その中から自分に合う指導を選び、自分の指導を作り上げてみてください。自分の指導を成長させるためには、年齢や経験はあまり重要ではないはずです。指導者として成長できる機会は、いつでもどこにでもあります。

初心者は指導の土台作りのために、
熟練者はアップデートのために、
さらに上を目指す人はオンリーワンのために。

誰かの指導を見て学ぶことはきっと役に立ちます。

iMA

iMA

コーチ|1972.4.1|幼児からプロ選手約4,000人指導|2019年Asian LABO設立|2022年iMA設立|アイデアをカタチに変える